講演「空自の情報通信の近況」
講師 : 航空システム通信隊司令 / 三和会会長
紹介

令和7年度の三和会賛助会会員向け講演会は、航空システム通信隊司令 兼 三和会会長を講師として、「空自の情報通信の近況」をテーマに実施されました。当日は航空システム通信隊からは防衛部長が講演補佐として参加し、さらにシステム管理群司令及び保全監査群司令も陪席という、非常に力の入った体制で行われました。講演に対する強い意気込みが感じられるものでした。
三和会の近況
まず、三和会の現状について説明がありました。会長は航空システム通信隊司令、相談役は空幕事業計画第2課長とし、会員は情報通信幹部全員を対象とする形に変更されました。また、三和会は経理機能を持たない組織へと大きく再編され、会則もそれに合わせて改正されたとのことです。時代の変化を感じた三和会賛助会の会員も多かったと思われます。三和会では空自クラウド(以下、空クラという。)を活用した情報共有を進めており、会員名簿の電子化や個人情報保護責任者の設置により、会員間の連絡調整が円滑になったとの紹介がありました。空クラは、ゼロトラスト型の概念(内部、外部ともに情報資産に対する脅威インサイダーも含む概念)を取り入れており、多様性とレジリエンス向上に寄与しているとの説明でした。
空クラの運用とDX の進展
続いて、空クラの運用状況について説明がありました。
- 全体員が端末を保有し、外部ネットワークを含む多様なアクセスが可能
- クラウド基盤管理隊がネットワークを監視
- ヘルプデスクには毎月5,000件の問い合わせ
- スマートデバイスでも一部の文書決裁が可能
- リモートワークは月2回を目標に運用
- 会議に端末を持ち込み、その場で調査を行う運用が定着
さらに、オンプレミスから脱却し、生成AI の活用も可能になったとのことです。ビデオ会議では、自動翻訳や議事録作成が行われ、そのデータをファイルとして共有できるなど、空自のDXは大きく進展しています。紙の起案用紙は見かけることも少なくなったとの話もありました。C3I システムを導入時のメール普及を超える変化であり、そのスピード感に会場からは驚きの声が上がっていました。

セキュリティ強化とRMF の導入
セキュリティ面では、2年前の情報保証訓令の改正により、リスク管理枠組み(以下、RMFという。)が全システムに適用されました。米国の基準であるNIST 800 に準拠したセキュリティ評価を行い、システムは継続監視されています。構成管理情報をデータベースで一元管理し、脆弱性対策も迅速に実施できる体制が整っているとのことです。従来の管理運用業務とは大きく様変わりした印象でした。
通信隊からサイバー運用隊への改編
令和6年度には、各基地の通信隊が基地サイバー運用隊へ改編され、通信運用の特技はサイバー運用特技へと変更されました。馴染みの深かった通信電子(通電)は大きく発展し、新たな任務が付与された形です。今や各基地のサイバー運用隊は、サイバー事案やRMF の技術的な内容についても支援をすることになりました。また、市ヶ谷の中央通信隊も中央サイバー運用隊へ改編され、各基地のクラウドの基準を管理する部隊であるクラウド基盤管理隊とともにシステム管理群を構成しています。また、保全監査群のシステム監査隊には認証班(システム認証担当)や情勢評価班(OS の脅威を収集・分析)が設置され、サイバー運用に直結する体制へと変化しています。
サイバー人材養成と国際連携
サイバー人材の育成として、航空システム通信隊の隊員が国外での日米共同訓練やASEAN 、欧州地域での多国間サイバー演習にも参加しているとの紹介がありました。また、これまで航空システム通信隊が実施してきたサイバーの準課程は、過去10年で年4回実施されてきましたが、次年度以降は4術校に移管されるとのことです。

装備品更新と新たな脅威への対応
移動通信群には新型の移動O/H が導入され、インフラ強化が期待されています。ドローンなど新たな脅威への訓練の必要性も強調されていました。企業からの提案は積極的に受け入れる姿勢であるとのコメントもありました。最後に、若い隊員の教育には、「現役とOB の連携が重要である」との言及があり、これは三和会賛助会の目的の一つである「三和会への賛助の具現化」にもつながるものと認識をすることができました。
講演会の締めくくり
質疑応答も活発に行われ、時間はあっという間に過ぎてしまいました。最後に三和会賛助会会長から講師への謝辞が述べられ、盛況の内に講演会は終了しました。コロナ禍による停滞感から一気に現代にワープしたようなインパクトのある講演会であり、ここまで変化を加速させた隊員の努力に深い敬意を抱く内容でした。講演会が起爆剤となり、その後の懇親会も大いに盛り上がりました。講師を快く引き受けていただいた航空システム通信隊司令 / 三和会会長には、改めて感謝申し上げます。

レポーター : Tokky